著者： はり灸治療院 美潤

不妊治療と仕事の両立、本当にできる？通院の頻度が増えて、職場に迷惑をかけてしまいそう！仕事を続けながら治療を受けるのは、やっぱり無理なの？

 

不妊治療と仕事を両立しようと考えると、多くの方がこうした悩みに直面します。日本では不妊治療を受ける人の約6割が仕事との両立が困難と感じており、その結果約3割の人が治療のために仕事を辞める選択をしています。治療を続けるためには経済的な安定も重要な要素。不妊治療は長期間にわたることもあり、1回の体外受精でも多額の費用がかかるケースもあります。仕事を辞める決断が、後悔につながることも。

 

どうすれば仕事を続けながら治療と向き合えるのでしょうか？企業の支援制度や両立のための具体的な戦略を知ることで、仕事も治療も諦めない選択が可能になります。仕事を辞めずに不妊治療を続ける方法を徹底解説。不妊治療を支援する企業の特徴や、利用できる制度、スケジュール管理のコツまで、あなたがベストな選択をできるようにサポートします。

 

不妊治療と仕事の両立が難しい理由とは？

不妊治療をしながら仕事を続けることは、多くの人にとって大きな課題です。日本においても、仕事を持つ女性の中で不妊治療を希望する人は年々増加しており、その両立に悩むケースが増えています。なぜ、不妊治療と仕事の両立が難しいのか、その理由を詳しく解説します。

 

不妊治療には、定期的な通院が必要です。体外受精や人工授精といった高度な治療を受ける場合、通院回数は大幅に増加します。

 

不妊治療の通院頻度（一般的な治療スケジュール）

 

治療方法	通院頻度（目安）	必要な時間	特記事項
タイミング法	月1～2回	30分～1時間	排卵のタイミングによる
人工授精	月2～3回	1～2時間	排卵誘発剤を使用することが多い
体外受精（IVF）	月4～6回	2～3時間	採卵・移植時は半日以上かかることも
顕微授精（ICSI）	月4～6回	2～4時間	高度な処置が必要

通院頻度が多いだけでなく、採卵や胚移植のタイミングが急に決まることもあります。仕事のスケジュール調整が難しくなることが、不妊治療と仕事の両立の大きな課題となります。

 

不妊治療は医師の診断のもとで決められるため、急な通院が必要になるケースがあり、仕事のスケジュールと合わせるのが難しくなります。企業によっては不妊治療のための特別休暇を設けているところもありますが、まだ一般的ではありません。

 

不妊治療中のストレスは、妊娠の成功率にも大きく影響を与えます。仕事のストレスがホルモンバランスを崩す要因となることが研究で示されています。

 

仕事のストレスがホルモンに与える影響

 

ストレス要因	影響するホルモン	体への影響
長時間労働	コルチゾール	自律神経の乱れ・排卵障害
過度なプレッシャー	アドレナリン	睡眠不足・免疫低下
人間関係のストレス	エストロゲン	月経不順・卵子の質低下
不規則な生活習慣	メラトニン	睡眠の質低下・受精卵の着床率低下

ストレスは副腎から分泌されるコルチゾールの分泌を促し、長期間続くと排卵障害を引き起こす可能性があります。また、ストレスが原因で月経周期が乱れることもあり、スケジュール通りに治療が進まないケースも少なくありません。

 

ストレスを軽減するためには、以下のような対策が有効です。

 

• 仕事のオンオフをはっきりさせる（業務時間外はリラックスできる環境を作る）
• 睡眠の質を向上させる（夜更かしを避け、規則正しい生活を心がける）
• 適度な運動を取り入れる（ウォーキングやヨガなど、リラックス効果の高い運動を習慣化する）

企業の側でも、不妊治療中の従業員がストレスを抱えないような配慮が求められます。フレックスタイム制や在宅勤務を導入することで、仕事と治療のバランスを取りやすくする工夫が必要です。

 

職場の理解不足とコミュニケーションの課題

不妊治療を進めるうえで、職場の理解不足が大きな障壁となることがあります。日本では不妊治療に関する知識が十分に浸透していないため、上司や同僚に相談しづらいと感じる人が多いのが現状です。

 

職場での不妊治療に関する理解度の実態

 

調査項目	結果（%）	特記事項
上司に不妊治療を相談したことがある	32.5%	相談しづらいと感じる人が多数
同僚に不妊治療を伝えたことがある	28.1%	理解を得られないと感じるケースが多い
不妊治療のために休職をした経験	14.3%	経済的負担が大きく、退職を選ぶ人も

多くの人が、職場に不妊治療を伝えることに抵抗を感じていることがわかります。その背景には、

 

• 「妊娠は自己責任」と考える文化がある
• 制度が整っていない企業が多い
• 上司や同僚に対する説明の難しさ

といった要因があります。

 

職場での理解を得るための対策

1. 情報を伝えるタイミングを見極める
• 直属の上司に、治療のスケジュールがある程度決まってから伝えると、スムーズに話が進みやすい
2. 伝え方を工夫する
• 「個人的な健康上の理由で、しばらく通院が必要になる」といった形で簡潔に伝える
3. 企業の制度を活用する
• 休職制度やフレックス勤務、リモートワークなど、会社が用意している制度を確認する

企業側も、不妊治療のための制度を整備し、従業員が安心して治療に専念できる環境を作ることが求められます。具体的には、「不妊治療休暇」の導入や、専門カウンセリングの提供が有効な手段となります。

 

不妊治療と仕事の両立には、通院スケジュールの調整、ストレス管理、職場の理解という3つの大きな課題が存在します。個人の努力だけでなく、企業側のサポートや社会全体の理解が不可欠です。不妊治療に取り組む人が、安心してキャリアを継続できる環境を整えることが、これからの日本社会に求められています。

 

職場に伝えるべき？不妊治療の報告の仕方

不妊治療を行うにあたって、職場に報告すべきかどうか悩む人は少なくありません。個人のプライバシーに関わる問題であり、伝えることで不利益が生じるのではないかという懸念もあります。適切に伝えることで職場の理解を得られ、働きやすい環境を整えることが可能になります。

 

不妊治療を職場に伝えるメリットとデメリット

 

項目	メリット	デメリット
報告する場合	通院の調整がしやすくなる / 職場のサポートが受けられる	プライバシーが保たれにくい / 偏見を持たれる可能性
報告しない場合	個人情報を守れる / 周囲の干渉を避けられる	休みの理由を説明しづらい / 通院のための柔軟な対応が難しくなる

報告のポイント

 

1. 伝える範囲を慎重に選ぶ
   直属の上司や人事担当者など、必要最小限の関係者に報告することでプライバシーを守ることができます。
2. 簡潔かつ前向きな説明を心がける
   「個人的な健康上の理由で定期的な通院が必要になる」など、詳細を伝えすぎずに理解を得られる表現を選ぶことが重要です。
3. 治療計画に応じたスケジュールを提示する
   職場が柔軟な対応をとれるように、可能な範囲で通院スケジュールを共有し、業務調整の相談を行うと良いでしょう。

企業の中には不妊治療に理解を示し、特別休暇制度やフレックス勤務を導入しているところもあります。制度を活用するためにも、会社の規定を事前に確認しておくことが推奨されます。

 

不妊治療と仕事を両立する上で、休職や時短勤務といった働き方の選択肢を検討することも重要です。特に体外受精などの高度生殖医療を受ける場合、治療のスケジュールが厳しくなり、通常の勤務時間内での両立が難しくなることがあります。

 

不妊治療と両立できる働き方の選択肢

 

働き方	内容	適用条件
時短勤務	労働時間を短縮し、通院や体調管理に時間を充てる	会社の制度によるが、育児や介護以外でも適用可能な場合あり
有給休暇の活用	通院のために計画的に有給を取得する	会社の規定に従い申請
フレックスタイム制度	出勤時間・退勤時間を調整し、通院時間を確保	フレックス制度が導入されている企業で可能
休職制度	一定期間仕事を休み、治療に専念する	企業の休職規定による（無給となる場合もあり）

仕事を辞めるべきか？不妊治療とキャリアの選択

不妊治療を優先するために仕事を辞める決断をする人は少なくありません。退職した人々の体験談を調査すると、メリットだけでなく予想外の困難や後悔の声も多く見受けられます。本項目では、仕事を辞めた人が経験した課題を分析し、事前に検討すべきポイントを解説します。

 

不妊治療を理由に仕事を辞める主な背景には、以下のような要因があります。

 

• 治療に必要な時間の確保：頻繁な通院や体調不良への対応が求められるため、フルタイム勤務では調整が難しい。
• 職場の理解不足：不妊治療に対する理解が乏しく、休暇取得が困難だったり、評価に影響したりする。
• ストレス軽減のため：仕事のプレッシャーがホルモンバランスや体調に悪影響を及ぼすと判断。
• 経済的な選択：パートナーの収入のみで生活可能な場合、一時的に仕事を辞めることで治療に集中できると考える。

不妊治療を優先するために仕事を辞めたものの、以下のような問題に直面するケースが報告されています。

 

退職後の主な後悔	詳細
経済的不安	仕事を辞めると収入が減少し、治療費の負担が重くなる。貯蓄を切り崩すことになり、精神的な余裕も失われる。
社会とのつながりの喪失	仕事をしていた頃は人間関係が広がっていたが、退職後は閉鎖的になり孤独を感じることが増える。
治療後のキャリアの不安	治療が長引いたり、成功しなかった場合、再就職が難しくなる。特にブランクが長いとキャリアに影響が出る。
夫婦間のバランスの変化	収入を夫に依存することになり、心理的な負担を感じるケースがある。家事や育児の役割分担にも影響する。

これらの事例を踏まえると、仕事を辞めることが必ずしも最善の選択とは限らず、綿密な計画が必要であることが分かります。

 

不妊治療をしながら仕事を継続することには、多くのメリットがある一方で、ストレスや体力的な負担などのリスクも伴います。ここでは、それぞれの要素を具体的に解説します。

 

仕事を続けるメリット

 

• 経済的な安定：治療には高額な費用がかかるため、収入を維持することで金銭的な不安を軽減できる。
• 社会とのつながりを維持：職場での人間関係や社会的な役割を保つことで、孤立感を防ぐことができる。
• キャリアの継続：治療後のキャリアへの影響を最小限に抑え、職歴のブランクを作らずに済む。
• ストレスの発散：仕事に集中することで、不妊治療のプレッシャーから一時的に解放される場合もある。

仕事を続けるリスク

 

リスク	説明
体力的な負担	通院と仕事を両立することで疲労が蓄積し、治療効果に悪影響を及ぼす可能性がある。
職場の理解不足	休暇や時短勤務の申請が受け入れられず、プレッシャーを感じることがある。
ストレスの増加	仕事のプレッシャーがホルモンバランスやメンタルに影響を与える可能性がある。
突発的な休みが取りづらい	採卵や移植のスケジュール変更に対応できないことがある。

仕事を続ける場合は、労働環境の調整や職場の理解を得ることが重要になります。

 

不妊治療と転職！相性の良い職種とは？

仕事を続けるかどうか悩んでいる人の中には、転職という選択肢を考える方も多いです。転職することで、不妊治療と仕事を両立しやすくなる場合があります。

 

不妊治療と相性の良い職種の特徴

 

転職を検討する際には、以下のようなポイントに注目すると良いでしょう。

 

• 柔軟な勤務時間が可能：フレックスタイム制やリモートワークが導入されている職場。
• 有給休暇・病休制度が充実：急な通院や体調不良に対応しやすい環境がある。
• 業務負担が少ない：肉体的・精神的なストレスが少ない職種。
• 不妊治療に理解のある企業：福利厚生として不妊治療サポートを提供している企業も増えている。

不妊治療との両立がしやすい職種例

 

職種	特徴
IT・Web関連	リモートワークが普及し、柔軟な働き方が可能。
事務職	業務負担が比較的軽く、勤務時間の調整がしやすい。
フリーランス・個人事業主	自分でスケジュールを管理できるため、通院との両立がしやすい。
医療・福祉系	医療機関勤務の場合、不妊治療に対する理解が得られやすい。

転職を検討する際のポイント

 

• 転職エージェントを活用する：不妊治療と両立しやすい職場を探す際に、専門のキャリアコンサルタントに相談すると良い。
• 企業の福利厚生をチェック：育児休暇制度や不妊治療支援制度の有無を事前に確認する。
• 転職のタイミングを見極める：治療のスケジュールと転職活動の時期を調整し、負担が大きくならないよう計画的に進める。

転職は不妊治療とキャリアの両方を考慮した大きな決断になります。自分に合った働き方を選ぶことで、より良いライフバランスを実現することが可能です。

 

不妊治療と仕事の両立には、辞める・続ける・転職するという3つの選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、自分に合った道を選択することが大切です。

 

まとめ

不妊治療と仕事の両立は、多くの方にとって大きな課題です。約6割の人が仕事との両立が困難と感じ、約3割の人が不妊治療のために仕事を辞める決断をしています。仕事を辞めることで経済的負担が増し、治療を続けることが難しくなるケースも少なくありません。

 

不妊治療には長期間にわたる通院が必要となり、仕事と治療を両立するためには、企業の支援制度を活用し、適切なスケジュール管理を行うことが重要です。

 

職場の理解が得られないと感じる場合、不妊治療支援を導入している企業への転職も選択肢の一つです。近年は、約3割の企業が不妊治療支援制度を導入し、休職や時短勤務を認める動きが広がっています。また、厚生労働省の助成金制度を活用することで、費用負担を軽減することも可能です。

 

仕事を辞める前にできることは多くあります。 自身の働く環境と利用できる支援制度を整理し、キャリアと治療の両立に向けた最適な選択肢を考えてみましょう。

 

よくある質問

Q.不妊治療をしながら仕事を続ける際に、一番の課題は何ですか？ A.不妊治療と仕事の両立における最大の課題は、通院の頻度と時間的な制約です。体外受精や人工授精を受ける場合、定期的な診察が必要になり、急なスケジュール変更にも対応しなければなりません。職場の理解を得ることが難しいケースも多く、上司や同僚とのコミュニケーションに苦労することもあります。適切な制度を活用しながら、ストレスを最小限に抑えることが重要です。

 

Q.不妊治療を職場に報告するべきかどうか迷っています。どのように判断すればいいですか？

A.不妊治療を職場に報告するかどうかは、勤務先の環境や制度によって異なります。休職や時短勤務を利用する場合、会社に申請が必要になるため、報告せざるを得ないケースが多いです。治療スケジュールをある程度柔軟に調整できる場合は、業務に支障がない範囲で伝えることも選択肢の一つです。職場の雰囲気や上司の理解度を考慮しながら、どのように伝えるかを慎重に検討することが大切です。

 

Q.不妊治療と仕事の両立を支援する企業では、どのような制度が用意されていますか？ A.不妊治療支援に積極的な企業では、特別有給休暇の付与、通院時間の調整が可能なフレックスタイム制度、テレワークの導入など、さまざまな制度が整備されています。福利厚生の一環として治療費の補助を実施している企業もあります。厚生労働省の取り組みにより、企業の不妊治療支援が広がりつつあり、働きながら安心して治療に専念できる環境が整備されつつあります。

 

Q.仕事を辞めて不妊治療に専念するか悩んでいます。どのように判断すればいいですか？ A.仕事を辞めて不妊治療に専念するかどうかは、経済的な状況や治療の進行度、精神的な負担を総合的に考慮する必要があります。退職すると治療に集中できるメリットはありますが、収入が途絶えることによる不安も大きな要因です。現在の職場に両立を支援する制度があるか、転職して治療と相性の良い働き方ができる企業を探すか、さまざまな選択肢を比較検討することが重要です。

医院概要

医院名・・・はり灸治療院 美潤

所在地・・・〒270-0163 千葉県流山市南流山4‐1‐4 KSビル１階

電話番号・・・04-7199-3734